大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和26(れ)553 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人鎌田豊吉、同宍道進及び同小関藤政の各上告趣意は、末尾添付の別紙書面

記載のとおりであつて、これに対し当裁判所は次ぎのように判断する。

弁護人鎌田豊吉の上告趣意第一点について。

原判決判示犯罪事実はその挙示する各証拠を綜合すればこれを認めることが出来

ないわけではない。従つて、同判決に所論のような違法があるとすることは出来な

い。論旨は理由がない。

同第二点について。

憲法第三七条第一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」とは、偏頗や不公平の虞

れのない組織と構成をもつた裁判所による裁判を意味し、個々の事件につき、その

内容実質が具体的に公正妥当な裁判を指すものではないことは、当裁判所大法廷の

判例とするところである(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日大法廷判

決、最高裁判所刑事判例集二巻五号五一一頁)。従つて、論旨は採用することが出

来ない。

同第三点について。

所論は憲法違反を主張するけれども、その実質は、原判決の訴訟費用負担に関す

る刑訴法規の解釈適用を非難するに過ぎない。そして、所論証人はいずれも原審公

判に証人として召喚を受けたものであり、原判決は被告人に対し有罪の言渡をして

いるのであるから、原審が、右証人に支給した日当等を総べて訴訟費用として被告

人の負担としたのは、固より、正当である。論旨は理由がない。

同第四点について。

本件上告は第二審判決に対して為されたものである。しかるに、所論は、第二審

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たる原審の判決又はその訴訟手続の違法を主張するものではなく、ただ第一審の手

続に訴訟法上の瑕疵があることを主張するに過ぎない。そして、旧刑訴では控訴審

の手続は純然たる覆審であつて、第一審の続審ではないから、仮りに第一審におけ

る手続に訴訟法上の瑕疵があつたとしても、それは上告適法の理由とならないこと

は当裁判所に屡次の判例が存するところである。それゆえ、論旨は採用し難い。

同第五点について。

論旨は事実誤認と量刑不当の主張であつて、上告適法の理由とならない。

弁護人宍道進の上告趣意(第一点)について。

本件公判請求書に公訴事実として司法警察官事件送致書記載の犯罪事実が引用し

てあること及びその末尾に論旨の指摘するような紙片が貼付してあることは所論の

とおりである。しかし、公訴事実を示すに当り事件送致書記載の犯罪事実を引用す

ることは何等差支がないばかりでなく(昭和二四年(れ)第一二八五号、同二五年

一〇月二五日大法廷判決、判例集四巻一一号二二〇三頁参照)、本件公判請求書に

前記のような紙片が貼付してあるのは、公訴事実たる司法警察官事件送致書記載の

犯罪事実の内容を明らかにする配慮に出でたものと認められるから、本件起訴状を

以つて方式を具備しない違法があるとすることは出来ない。従つて、論旨は採るを

得ない。

弁護人小関藤政の上告趣意(第一点ないし第四点)、について。

所論は原判決には理由不備(論旨第一点)審理不尽と経験法則違背(同第二点)、

ないし採証法則違背(同第三点及び第四点)の各違法があると主張する。しかし、

原判決認定に係る詐欺の事実は、その挙示する各証拠を検討すればこれを認めるこ

とが出来ること弁護人鎌田豊吉の上告趣意第一点につき判断したとおりである。そ

して、数個の矛盾する証拠が存する場合その何れを採用するか、又可分な一つの証

拠中に矛盾が認められる場合そのどの部分を採用するかは、事実審裁判官の自由な

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心証に委ねられているところである。論旨は、いずれも、原判決が証拠としていな

い証拠を捉え、これと異る見地に立つて、同判決の適法な採証を非難するに帰する

のであつて、原判決を目して所論のような各違法があるということは出来ない。論

旨は、すべて、理由がない。

弁護人深沢真雄は法定の期間内に上告趣意書を提出しない。

よつて、刑訴施行法二条旧刑訴四四六条に則り、裁判官全員一致の意見で、主文

のように判決する。

検察官 岡琢郎関与

昭和二七年二月八日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

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